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リーダーインタビュー2025.05.09

キューネ・アンド・ナーゲル日本法人 松𠮷穣社長が掲げる「物流・SCMの新時代創成」

航空・海上貨物輸送で世界トップクラスのキューネ・アンド・ナーゲル。2024年8月に日本法人社長に就任した松𠮷穣氏に、業界動向と今後の展望、求める人材について伺いました。

Talent x Buzz

世界100ヵ国近くで事業所を展開し、世界をリードするロジスティクスプロバイダーのキューネ・アンド・ナーゲル。スイスに本社を構え、日本法人は、東京本社・大阪・名古屋・福岡などに拠点を構えています。航空・海上貨物輸送で世界第1位のポジション、陸上・コントラクトロジスティクスでも上位ポジションを確立。 今回は2024年8月に同社日本法人の代表取締役に就任した松𠮷穣氏に、Talent x Buzz株式会社代表取締役高と事業ディレクター小澤がインタビューを行い、業界動向や今後の展望、求められる人材について伺いました。

キャリアの原点

小澤まずは、松𠮷さんのご経歴を教えてください。

松𠮷慶応大学卒業後、船会社のAPモラー・マースクグループに入社。グループ会社を含めてイギリスや中国で勤務しました。そして2013年にアディダスへ移り、グローバルロジスティクス部門にシニアディレクターとして入社し、香港とスイスで働きました。約9年間、サプライチェーンのデジタル化やアウトソーシング事業の推進に従事し、2022年にスイス本社のキューネ・アンド・ナーゲルから誘いを受けて、同社のインターナショナルサプライチェーン部門のトップとして入社。そして2024年8月、日本法人の代表取締役として日本へ戻ってきました。

小澤就活で物流業界を選ばれた理由、そして今でも一貫して物流業界でキャリアを歩まれている理由を教えてください。

松𠮷体育会に所属していたこともあり、そのつながりを活かして日系企業からオファーも受けました。けれど、20代で60代までの人生が決まってしまう気がして、どこか恐怖に近いものを抱いたのです。悩んでいたときに届いたダイレクトメールが、マースク社からの案内でした。デンマークの船会社なんて、ニッチで日本では知られていませんでしたが、「将来がまったく決まっていないほうがおもしろそう」だと直感的に惹かれました。グローバルな舞台で実力をつければ、どんな時代が訪れても自分の武器になると思いましたし、物流が持つダイナミックさに可能性を感じました。2年間のトレイニープログラムを経て、その後は海外赴任して働く機会をいただきました。国境を越えてモノを動かし、人と世界をつなぐ。生活やビジネスを支えるインフラとしての役割も担う。社会に欠かせない、責任感とやりがいが大きい仕事です。

日本の物流業界のポテンシャル

小澤日本では、物流業務と聞くと下請け会社のイメージがあるようにも思います。

松𠮷私の就活当時からそして現在も、泥臭くて多忙といったイメージがありますね。

ところが、ヨーロッパをはじめ海外における物流業界の立ち位置は、日本と大きく異なります。専門性の高さとグローバルに活躍できる点から、とても人気があります。物流・SCMソリューション会社の人たちは、外部アドバイザーとしてメーカーのワーキンググループに呼ばれる機会も多くあります。このギャップは、日本の物流業界におけるポテンシャルの高さとも言えます。日本へ戻ったからには、物流業界の可能性をもっと広げていきたいと強く感じているところです。

とくにコロナ禍を経て、物流やサプライチェーンの役割の価値が見直されています。経営会議に挙がる重要な議題であり、戦略そのものです。欧州では、物流会社がビジネスパートナーとして経営課題を解決するソリューションを提案しています。私自身、メーカーの立場を経てフォワーダーであるキューネ・アンド・ナーゲルへ入社しました。フォワーダーの立場から、業界問わずさまざまなお客様へ最先端の物流ソリューションを提供する意義は大きく、日本の物流・サプライチェーンを進化させていくプロセスは壮大ですが、社会にとって欠かせない進化ではないでしょうか。

小澤御社としては、どのように顧客へ高付加価値のサービスを提供していこうと考えていますか?

松𠮷進化と申しましたが、現場では価格競争そのものから脱却しづらい事情もあります。その点を理解した上で、提案力を向上させていきたいですね。サステナブルの観点だったり、在庫管理の観点だったり、お客様の経営課題や重点領域に照らし合わせて、物流観点からアプローチしていきたい。課題に応じて、適切なシステムやソリューションを積極的に提案して未来を描き、価値を感じてもらいたいと思っています。

物流業務は、世界情勢やマクロ経済の影響をダイレクトに受けます。例えば、スエズ運河の閉鎖やアメリカ東海岸での大規模ストライキが原因で、モノの流れが数日、時には1ヶ月以上も止まりました。目下米国の相互関税政策の貿易費への影響やサプライチェーンへのインパクトなどといった恒常的に不確実な中でも、私たちの現場では日々、対応を考えています。どんな事態が起きても、モノを動かすのが物流のエキスパート。世界の動きに常にアンテナを張り、現状分析やリスクマネジメントを行いながら、お客様に安心してもらえるサービスを提供しなければなりません。

また、当社ではグローバルでデジタライゼーションを進めており、活用に力を入れています。社内においても、デジタルの力で業務を効率化させ、お客様と向き合うことにもっと時間を費やしていきたい。物流業界の人もクリエイティブな仕事に貢献してほしい。顧客理解の解像度をあげて、先進的な提案ができるよう、社内でもトレーニングを進めています。

小澤昨今、メガフォワーダーさんやキャリアーでM&Aが増えています。御社でもM&Aを通じた事業拡大を目指していますか?

松𠮷Roadmap 2026から変更はなく、私たちの戦略は一貫しています。業界再編が加速する今こそ、私たちはお客様と真っすぐに向き合いたい。リソースは、お客様への価値提供と社員への投資が最優先事項。採用と育成の両輪で組織としてのオーガニックな成長をめざしていきたい。その上で、これらの優先順位を踏まえつつ、お客様に対してより大きな価値を提供できる可能性があるM&Aのチャンスがあれば積極的に検討していきたいと考えています。

社員が働き続けたいと思う環境づくり

小澤採用と育成を強化されるということですが、人材不足は多くの会社で経営課題になっており、離職防止もテーマとなってきています。御社ではどのような取り組みをされていますか?

松𠮷物流業界は人材の行き来が多く、各社で人が取り合いになっています。転職理由はさまざまな背景がありますが、「社員が働きつづけたいと思う環境づくり」が今のキューネ・アンド・ナーゲルにとって最も大事なテーマ。世界中のキューネ・アンド・ナーゲルで掲げているテーマであり、各国の社長が集う国際会議の場でも、相当な時間を割いて話し合われました。

業績と同等に、環境づくりや社員の満足度を重視するように変化してきています。社内では「KN Experience」と呼ばれていますが、日本法人独自でも、ソフト面とハード面の両輪のアップデートを進めています。ハード面でもいくつか動きだしているところです。ソフト面で言えば、流動性の高い業界だからこそ、なぜ今このタイミングで当社で働いているのか、といった意義や意味を社員ひとりひとりに考えてもらいたいと思っています。

高社内でのビジョンやミッションの浸透というところでしょうか?

松𠮷はい。当社は1890年にドイツで創業された会社で、約100か国の1300拠点に8万人を超える社員がいます。 “Delivering progress to the society”というパーパスをもって、全世界の当社社員が日々取り組んでいます。しかし、忙しい毎日の中では、会社のパーパスはもちろん、自分が働く意義や人生との接続について、あまり考えられていないのではないでしょうか。

当社のパーパスに入っている「Progress」(進歩)ですが、これを私の中では「明るさ」のようなニュアンスで、広義に捉えています。つまり私たちはモノを届けることで、社会や人々の生活に明るさをもたらし、インパクトを与えている。この価値の奥深さを一人ひとりが味わい、かみしめることで、「この仕事が好き」「やりがいがある」と思ってもらいたいのです。その上で、営業職でもオペレーション職でも、自社が提供するサービスへの信頼や共感、愛着を持ってもらいたいですね。「このサービスはキューネ・アンド・ナーゲルしか提供できない」というサービスの開発を心がけ、それがまた、社員にとって働き続ける理由になってもらいたいと思っています。

高ネットの口コミベースでは、ネガティブな元社員の声も多いですがこの点はどう感じていますか?

松𠮷入社以降、日本国内の全拠点でのタウンホールと、個別の対話をかなりの数やってきました。当社は日本で40年の歴史がありますが、外国人リーダーによる経営や考えにより、業績だけを重要視してしまったため、社員へのケアが十分ではありませんでした。私自身、帰国前にネットで口コミを読み、日本法人の様子を想像した時は驚きと困惑を抱きました。キューネ・アンド・ナーゲルは世界60か国以上で、「働きがいのある企業」として認定されているんです。

小澤着任されて、どのように感じられましたか?

松𠮷仕事に追われ、大きなストレスを抱えている人が多く、閉塞感を感じました。ただ、そうはいっても他国と比べて、日本法人だけが特別に業務過多ということではありません。日本人の真面目な気質も相まって、細部まで突き詰めてしまったり、やらされている感覚が強いがゆえにストレスが大きくなってしまったりしているように思いました。就任以来、目的の説明と納得感の醸成を徹底しています。背景や事情の開示を通して透明性を高めています。

これは私の仕事観でもありますが、いつも、すべてが願った通りに進んでいくことはありません。理不尽なことも起きます。納得しづらい方針に出くわすことも、組織の都合に翻弄されることもあるでしょう。

仕事を続けるのであれば、どのような逆境であったとしても、どうすればよくなるか・おもしろくなるかとポジティブに変換し、自分の意志で前に進んでいくことを大切にしていきたいです。

当社では、世代も国籍も多様な人たちが働いているので、価値観も多様です。しかし、私たちフォワーダーは資産を持たないお客様中心のビジネスです。何がいちばん、目の前のお客様に喜んでもらえるのかという視点で、一人ひとりが考え、行動してもらいたいですね。前向きさと、主体性は欠かせません。

中長期的な狙いでいえば、グローバルな環境を活かした個人のキャリアをサポートするシステムを整えていく予定です。他国へリロケーションするプログラムがありますが、日本からの参加者を増やしていきたいですし、Women in Logistics Leadershipと呼ばれるグループの日本支部の立ち上げなど、有志の動きも少しずつ出てきています。

求める人物像

小澤まさに、新しいキューネ・アンド・ナーゲルになろうとしているのですね。

松𠮷今のキューネ・アンド・ナーゲル日本法人は、まだまだ完璧ではありません。私を筆頭に、大改革を進めているところです。ローカライズでできることも多くあるので、ときには国を越えて、海外のKN社員と連携し、海外のベストプラクティスから日本での展開をつくっていく。試行錯誤の連続であり、一筋縄ではいかないことも多々ありますが、このプロセスを通して培われるレジリエンスは、何物にも代えがたい経験になると信じています。

小澤どんな人に来てもらいたいと考えていますか?

松𠮷変革は、社長ひとりで成しえるものではありません。社員一人ひとりと一緒に、みなさんそれぞれの行動を起こすからこそ、トップダウンとボトムアップの双方向でうまく進んでいけるのです。そのため、お客様ファーストの思考の中で、主体性や積極性を持っている方にぜひ来てもらいたいですね。グローバルの日本支社、外国人の上司・・・何事もスムーズに進むとはかぎりませんが、必ず突破口は開けるし、開いてみせる。前向きに取り組む明るさも持っていてほしいですね。

小澤本日はありがとうございました。

本記事は Talent x Buzz 公式LinkedIn に掲載した投稿を再編集したものです。

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